倫理学者と哲学者

哲生はトルストイの『戦争と平和』をファンタジーノベル『まわる神話』に書き変えようとしていた。哲生は学生の身でありながら小説家としてデビューし、長編小説を書くことを得意としていた。哲生は6畳間の安アパートで小説を書き、哲学者のジャック・バロ…

待たされる時間と待つ時間

精神科の診察に又らされる3時間があっという間と感じる人は少ないと思う。 そして、長い時間≪待った≫としてもそこから恵まれた時間はなかなか得られない。そこではみかけない人ばかりとみかける人がちらほら・・・・・。 待つ時間を愉しくすごすことによっ…

語るって何だろう

私は語ることが下手だ。そのために無意識下のしずさを大切にするようになっていった。人として持っているペンや腕時計はいったい何のための暗示なのだろうか、とか人がてくてくと歩いている靴音はいったい誰の靴音で誰が登場してくる暗示なのだろうかと首を…

アリストテレスのpolitike について

和辻哲郎は『人間の学としての倫理学』のなかで 倫理学は単純にEthicsの同義語として通用している。人は倫理学の語義を問うに当たって、平然とethike,ethos,ehosというごときギリシア語の意味を取り扱い、何ら怪しむところがない。しかし我々の倫理学の概念…

小説を書くということはどういうことか

われわれはいつも神話を求めている。なぜならば、つぎからつぎへと繰り返される日常が、たいくつでツマンネー時をすごしているためだ。そうでない場合も多いが、ここでは省略することにする。「物語り」を書くときに一番難しいのは<自然な会話>と<自然描…

語学ってなんだろう

東京の神田近くにある語学学校に行くと古典ギリシア語やラテン語やフランス語や英語を学ぶことができる。そのなかでもメジャーな古典ギリシア語に何回か通うことができると自然と仲間意識が生まれてくる。私は生来の怠け者なので必ず欠席をしてしまう。そし…

日常

山田明又は小説家であったが、なかなかヒット作品を生み出すことができなかった。明又はショートショートを書くことを得意としていた。明又は哲学の教授をしており、生徒からささやかながらしたわれていた。 しかし、山田明又には肺がんがありもう手遅れの状…

マイル・ストーン

小説を書くことほど難しいことはない。0から1を生み出すいとなみは想像を絶する精神のエネルギーをつかう。<物語りの時間>を考察して人にフランスの思想家ポール・リクールがおりフッサール、そしてハイデガーがいる。とくに<在る>ことについて誠実に…

作家と演出家

島田哲貴は作家でギリシア語の文献をもとに小説を書いていた。島田貴子は哲貴の妻でかけだしの演出家をやっており、クラシック・バレエの演出をすることもあった。クラシック・バレエは貴子が4年間積みかさねてきた経験があり、身体面やメンタル面のケアも…

『小説と劇団』

火村哲明は劇団を経営していた。妻はちびっこ体操教室を経営していた。火村哲明は脚本を書いたり、小説をかいたりしてマルチな才能があり、田舎にもどっても劇団のメンバーとは歓談することが多かった。火村哲明は演劇として太宰治や中上健次の作品を手掛け…

哲学の覚書き

倫理学とはなにか 友たちのつくりかた、人と人とのあいだ和辻哲学とハイデバーより 和辻哲郎の著書『人間の学としての倫理学』 第一章「倫理」という言葉の意味 和辻は「倫理学とはなにか」という根本命題について<真摯にひたむきに>にとりこんでいる。を…

『大澤の冒険』

大澤は推理小説を書いていた。人間関係の深部をえぐるような小説で人気があった。 大澤は推理小説を書くかたわら、犬の世話をしており、妻はあまり犬の散歩をしないのでげんなりしていた。妻も小説を書いており、互いに原稿をみせあってきそいあっていること…

書店の想い出

私の通っている書店には椅子が必ずおいてある。それには「読んでほしい」もしくは「読むといいよ」という暗黙の了解が相互で取り交わされている。不可思議なことにある本を取るとそれにつられて何冊か本を買ってしまう悪癖が私にはある。しかし家で本を紐解…

『倫理学者と作家たち』

山田は倫理学者だった。きまった時間に起き、そしてきまった時間に眠りについた。山田には3人の作家の親友がいた。ひとりはハード・ボイルド作家の島田、ひとりは推理小説作家の大澤、最後にエッセイ・イストの島谷がいた。 山田は倫理学者にもかかわらず、…

教育哲学ショートショート 『外交官と倫理学講師』

サエユリ・アカネは外務省に務める「凄腕」だった。邦人をまもるためには命をもおしまなかった。そしてアメリカのCIAにたのまれて外務大臣をライフルで射殺してくれと、依頼があった。 夫は倫理学の非常勤講師を高校でおこなっていた。夫は妻のことを心配し…

本との出逢い

演劇と哲学すること。東京にいって御茶ノ水と水道橋近くのアテネフランセにいきそびれて東京駅の近くのおちついた喫茶店でハムサンドとコーヒーを注文しました。いきそびれたのでそのまま本屋巡りをしました。 『存在と時間』で家族の存在や人と人との間柄に…

教育哲学ショート・ショート 『体操選手』

その男は体操選手だった。朝になるといつものように炭酸マグネシウムを掌にこすりつけ鉄棒をやった。するり、するりと流れるようなフォームはぶれがなかった。 昼になると床の練習にとりかかった。夕方も長い時間、すみからすみまで筋肉を動かし続けた。夕方…

『魂の錬金術』構想ノートより

私は「信と知の問題に関心を持っている。そのことは「信じること」と 「知ること」は同じことなのか、私には疑問をもっていいた。人 自己の罪を赦すために教会へいき、祈りをささげる。一方、「知ること」つまり知識を習得し、世界や「世間」のために活かせ…

教育哲学ショート・ショート『哲学者と作家』

その哲学者はきまった時間に起き、きまった時間にねむった。一方、哲学者の親友の作家は夜遅くまで小説を書きためていた。哲学者の仕事は横文字の文章を縦書きの文章にだまくらかすことである。作家はアイディアにこまったときに哲学者の言動を書いていた。…

教育哲学ショート・ショート『地下の鉱脈』

トシマ・トオルは東京の地下にもぐって存在理由を求める旅に出ることにした。サイユリ・アカネは新しいネームと演劇のシナリオを書いていた。新しいネームは古風でサイユリ・アカネらしい筆づかいで書かれてあった。 トシマ・トオルの地下を探るような冒険は…

『道weg 神話構想ノート』より

私には3人の陸上競技なかまがいる。同じ飯を食べたなかで「いわずもがな」の間柄である。おそらく3人とも私よりもはるかに要領が善くテキパキとこなしていたからの様子だと現在の私の馬鹿ぷりをわらうにちがいない。 もし集まるとしたら三人はこうみえても…

倫理その3

トモタ・ノボルは外交官を主人公にした推理小説をかくことになった。普段は漫画のネームを書いているのに突然の依頼で舌をまいてしまった。トモタ・ノボルは推理小説をよんだり、イケダ・アサミの人脈を活かして推理小説家と話し合ってどのようなストーリー…

倫理学 その2

トシマ・トオルは小説を書くことに息づまりをかんじていた。そのためにいろいろな本を読破することにした。イケダ・マサミもまたスランプに陥っている状態だった。しかし、倫理学の授業はうまくはこぶことができた。おそらく「場所」になれてきたためだろう…

教育哲学ショートショート 「倫理学」

トシマ・トオルは全国をまわる教師だった。トシマ・トオルは倫理を教えていた。彼自身どうしてこの職業に就いたのかわからなかった。トシマ・トオルは学校がおわる頃になると自宅にもどり、黙々と小説を書いていた。その原稿は会社に出版されることがなかっ…

語学の勉強

フランス語:『フランス語ハンドブック』にある用例をノートに10回書き写しして構文力を鍛える。アテネフランセの古典ギリシア語の解説のフランス語が読めるようになるために。あるいは例文がのっているものを10回書き写してみる。ドイツ語:『標準ドイ…

教育哲学ショートショート 『新 ふたりの仕事』Ⅰ

トモタ・ノボルは漫画の原作を書いていた。サイユリ・アカネは作画をやっていた。トモタ・ノボルは昔、小説家だったために原作がそのまま文章として大学ノートに書かれていた。サイユリ・アカネは少女コミックに定期的にすぐれた作品を発表していた。また、…

理論と実践

私はアテネフランセに7月までかよって京都にもどろうとかんがえています。古典ギリシア語はよそうどおり難しく、解説がフランス語なので度肝をぬきました。クラシック・バレエに関しては京都に帰還してからぼっちらぼっちら再開していこうとかんがえていま…

アリストテレスの倫理学について

私は幸福とは何か考察するために『ギリシア・ヘブライの倫理思想』からアリストテレスの項目とモーセの十戒の部分を引用していきたいと思う。1『ニコマコス倫理学』の位置づけと構成 アリストテレスに帰せられる倫理学書は三つある。『大道徳論』、『エウデ…

大学の授業と読書会

私は夏休みにはいるまえに大谷大学の哲学演習に出席していきたい。他者と自己のめぐ りあいによって「根本から考える姿勢」をみにつけるためである。また、他者と自己のめぐりあいを「根本から考える姿勢」をみにつけ、学んでいくためにフッサール現象学やハ…

教育哲学ショートショート 「ふたりの仕事」2

ある日、キヨタアユミは大きな仕事をかかえていた。その内容は夫にも秘密だった。ドストエフスキーの作品のなかの『カラマーゾフの兄弟』をファンタジックにアレンジして舞台化する、という仕事だった。人物構成が難しく、演出ではなかなか仕事がはかどるこ…